最初期キリスト教絵画の額装

シリア東部で発掘されたドゥーラエウロボスの私宅聖堂の洗礼堂の壁画は、キリストによる救済や生涯の物語を主題として描いています。ポンペイに残された絵画とはその目的は明らかに違うそうです。絵画が古代ローマ時代の美術の中心にあったギリシャ神話や世俗画のような美しさを目的に作られたものから、布教のための伝達手段に変わっていったことが分かるそうです。その絵画や石棺に描かれた肩に羊を担ぐ羊飼いと二人の女の姿は、キリスト教の象徴であり聖書のマタイ伝の一場面です。描かれた壁画は古代の絵画のように枠取りされていて、周囲との差別化が見て取れます。そこには装飾的な意匠が施されているわけではありません。単なる線ではありますが、最初期のキリスト教絵画に、額縁と額装の予兆としての枠取りと考えることができるのではないかということです。