歴史を読み解く

肖像画に使われる額縁は、多くの場合そのまま残っているそうです。普通に飾るための絵であれば、違うものに取り替えることも珍しくありませんが、肖像画は「家」を象徴するもののため、物をそのまま大切に引き継いでいくことが多いそうです。『アントワーヌ・バリスの肖像』も例外でなく、額縁ごとその形が残されているそうです。ただし、一点だけ手が加えられており、肖像画の人物名を記しているプレートが後から付け加えられています。これは没年の数字が後から付け足されたことであり、肖像画の人物が生きているうちに描かれている場合には、このような変更もあり得たのです。描かれている絵から、どんな歴史があったのかを読み取ることができるのはもちろん、額縁からもどんな出来事があったのかを想像することが可能な場合もあるのです。